働かせ方(働き方)改革関連法案は廃案した方がいい

法政大学キャリアデザイン学部教授 上西 充子「待ってても、あるべき法の秩序は実現しない 働き方改革による労働時間規制の緩和をめぐって」
http://gendainoriron.jp/vol.15/feature/f02.php

 上の論考は、現在の国会で喧しい、働かせ方の変更について。労働基準法に頼って働いている労働者はこれを一読する価値があると思う。

 さて、以下は私の考えだが、法律的な意味での労働者に対する働かせ方を変える方法は既に存在する。それは、その労働者と労働契約を結ぶのではなく請負契約を結ぶ方法である。こうすると、裁量は働く人のものであり、特例等を設けるかにもよるが報酬は定額である。賃金という概念は存在しない。労働者であった人は個人事業主となり、労働基準法でいう労働者には該当しなくなる。

 そして、私の経験を話すが、実際にそういう会社で働いていたことがある。その会社とは、関東地方発祥でここでは有名な24時間営業のある弁当屋チェーン会社であった。

 以下、そこの「個人事業主」さん達の印象を書いておこう。

 まず、「地区長」なる存在がその個人事業主なのである。4〜6店舗ほどから成る「地区」の所属店舗の経営を見ていくのが地区長の仕事である。店長と地区長とは概念上異なる。しかし、ある地区長が自らの地区所属の店舗の店長も兼任していることが通常の習慣であった。その店はたいてい売上高の小さい店であるが、別に仕事負担がないわけではない。発注などの通常の仕事に加え、様々なトラブルだってある。そういう地区長が店長を兼ね愛している店舗とが1,2店は地区に含まれているのである。
 さて、こういうように編成された店舗が当時、どれも通常24時間営業なのであった。今もそうだ。24時間なのだから、クレームなども真夜中に来たりする。よって、地区長は自分が寝ているときにも電話がかかってきて、その音に起こされて事態の解決に動かなければならないようであった。休日の日にもかかる、いや「休日」というのは労働者にとっての概念なのであるから、労基法対象外であった地区長にはその点、どうだったのだろうか。地区長の契約までは私は見ていないので法律上は何とも言えないが、現実には毎日ということもあったようだった。
 そういう地区長も人である。家族だっている人もいる。休息もとるべきだし、この弁当屋にいない時間だって必要だ。地区長によっては、上の役職の「エリアマネージャー」という存在の人に仕事を任せるか、あるいは、自分担当の地区所属のヒラの正社員、アルバイト上がりの有機雇用の店長、やる気のあるアルバイトに仕事を委譲していく。上手くやって楽をしている地区長もいる話を聞いたこともある。しかし、24時間営業で、しかも5店舗ほど抱えていたら、たいていの地区長にはそうは問屋が卸さないということが多かったようだ。特に人手不足の地区に所属された地区長は、自らの固有の業務に加え、自分自らが店舗でアルバイト等と同じ作業をしなければならなかった。
 話がそれるが、賃金も高ければ人手不足も何とかなったのかもしれないが、その弁当屋は、まぁ安かった。だから、私が辞めるまでは少なくとも人手不足は解消できなかった。また、アルバイトも長く続く人もそういるわけではなかった。今も事態は変わっていないだろうと思う。
 話を戻すと、そういうわけで、余程の運に恵まれない限り、地区長は毎日働くことになった。しかも、働く時間帯が一定しない。ある日は日中(9〜17時)に働いたら、次の日から3日間続けて深夜(22〜翌6時)、時には早朝(6〜9時)も加わり、次の日には再び昼勤務。これが毎日毎週!
 以上が地区長なる個人事業主の印象だった。他に書いておくべき仕事内容もあるが、書ききれないので割愛する。

 なお、この会社にはヒラの正社員もいたが、これは労働基準法で言う「労働者」であった。したがって、労働賃金はでた。が、以上のような地区長も人の子。休まないといけない。ヒラはその代わりとなって不規則的な労働時間を背負わされるのであった。そして、先にも書いたようにアルバイトも背負っていくのである。今回のバカ法案に対して、人によっては「年収がそこまで達していないから自分には関係ないや」と無関心を決め込んでいるのかもしれない。が、その法律対象者の負担の分担がそういう「無関係」な労働者にも来る、というか実際に来たケースが私の話した弁当屋チェーンであったわけだ。だから、この法案には無関係を決め込まない方がいいですよ。