梅が咲いていた。

 北海道から本州にこの時期に移動してきたあのときも同じように梅が咲いており、北海道では白き雪の華ばかりで変化のなかった自分の感性が揺り動かされたことを思い出した。小さな、しかし色艶と形からして花らしさが伝わってくる梅というものを見て嬉しくなったのだった。植物が寒さに堪えて変化を見せない中、梅というのは花らしい花の中で最も早い時期に現れてくるため人に季節の変化を予感させるという特長があるように思う。ただし、北海道では梅は5月、しかも桜と同時期か後で咲いていたように記憶しているため、この長所というのはどこにでもあるようなものではないのだけれど。

 ふと、自分が大学を卒業したときのことを思い出した。私は4年より余計にいたから、自分の卒業時、それまで自分にとって学友であった人々の多くが周りから卒業していなくなっていた。卒業が決定されてから自分ひとりで自分が入学以来うろちょろしていた街を歩いてみた。誰かとあそこで何々をしたという記憶がよみがえり、しかしもうその人は既にいないのだ、と思ったのが残念で辛いものであった。また、卒業後になっても、自分が大学在籍最終年のとき、心理的圧迫を感じながら勉強をしていたことを時々夢に思い出すのだ。笑っちゃう話かもしれないが。
 あの1年は辛かった。