「独裁者の部屋」(スウェーデン、NHK)を見て

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 私はどういうわけか、NHKオンデマンドの視聴感想ばかりに使ってきた。
 ところが、いつも、これまでのどの番組においても、「はてなブックマーク」で「NHKオンデマンド」の各番組にコメントしているユーザーが自分以外しかいないことにようやく気が付いた。この数の少なさには正直、驚いた。だからといって態度を変えるわけではないが。

 さてところで、そのオンデマンドで「独裁者の部屋」という、NHKが賞を上げたスウェーデンの番組を見た。全8回。
 以下、その感想。
 この番組の5,6回目の途中で、ドロップアウトしていく連中がいたり、そうしなくて残ったとしても全員が精神的苦痛を受けたりしていることに違和感を感じた自分がいることに逆に気が付いた。報酬、つまり物資やカネをもらえるんだったら残るメンバーが強いられている生活に易々と自分だったら順応できるのではないかと思ったのだ(*)。
 しかしそう思うことはおそらく何かおかしい。なぜか。一方的に番組を見ている側の自分からは、番組出演者が各単色のクリップを、複数色のクリップが混ざり合った中から指定のものを選び出して拾い上げるだけという毎日内容の変わらぬ単純な労働ばかりしていたり、皆との労働と食事以外外出禁止だったり等、自由が明らかに制約を受けているからだ。カネはもらえる、しかし自由の制約という代償が付く。自分の生活を、それに関与しない者の視点から見れば明らかに制限が付いている。だがその生活を営む人にとって見ればその生活は変なものではない。
 こういう番組出演者の生活が自分の日常生活と全く一致していないとは言い切れない。自分もまた、カネが必要だからと割り切ってやっている生活の部分もある。そのために自由の制約を暗黙裡に進んで受け入れている。この番組出演者も、残るメンバーはそういう考えに順応できた者ばかりになっていった。外部の視点から見れば変だというのに……。
 こういう風に、「独裁者の部屋」は、これを書いている自分の生活に疑問を投げかける番組だった。
 なお番組最後では、毎回番組冒頭で紹介されていた賞金のことがどうなったのか全く不明なまま終わる。そこの点が私としてはあまり気にならない。どういう与えられ方をしようが(ひょっとして与えられなかったかもしれないが)、それに至るまでに残るメンバーが結局、自分の生活を進んで犠牲にしていったことにあまり後悔しなくなっていって終わってしまったたことの方が私は見過ごせない。そして、繰り返すが、それはひょっとしたら自分の現実生活に対してでも当てはまる、見過ごすべきない点ではないかと思いもした。

*後日追記
 他の人も同様の感想を持っているようだった。番組のホームページを見る限りだが。4名が「ここに注目」としてこの番組の感想を書いているが、そのたいていが、日本人ならばこの労働にスウェーデン人よりも簡単に適応できるだろうと書いていた。私もそう思う。