戦勝国

 先の大学時代、ある先生が法哲学の授業中に、「正義」などに社会に出てからも興味を持っている人がどれぐらいいるかな、と言われたことを覚えている。

 さて、日本の周辺諸国がすべて戦勝国であり(韓国・北朝鮮は厳密には違うが)、一部の領土は実効支配され、その過程において条約違反など平然としてあった。侵略だが、それは今なお回復されていない。一応、現在では法的手段が用意されているとしても、相手国の同意を得る必要があるなど不完全なものである。そこには武力的勝利をもって正義とする、という発想の余地を今なお認めていると感じられる。

 自国が戦勝国であるというのは今なお日本人に対する武器となっている。
 例えば、アメリカ合衆国に対しては ESTA という手続きでお金を14ドル払った上で入国の申請をしないといけないのだが、そのときの質問項目のひとつとして、「あなたはナチス・ドイツ及び同盟国の戦犯ではありませんね?」などというのがある。戦犯は極東国際軍事裁判で刑に処されても、そしてESTA自体、21世紀の近年になって作られた制度なのに、そんな質問条項があるわけだ。
 また、歴史的問題が日本とはあると主張しながら、そんな自国が戦後において行った日本の国土への侵攻は不問にふそうとする国もある。以前、ある日の日経新聞に、そんな国のひとつの大統領が「日本と話していると法律、法律などとまるで弁護士と話しているようだ」などと発言したと読んだが、これが事実ならば、結局覇道でもってこの国を遇せねばならないのだろうか。
 考えるまでもなくどれも馬鹿げていると私は思うが、21世紀になっても戦勝国という立場をしらっと有利な形で日本人に使ってくる国々があるわけだ。