雪の記憶

 はてなダイアリーによれば「今週のお題は『紅葉』です」だそうだが、私のこの時期の印象とは「初雪」である。北海道に暮らしたことのある者ならば誰しもそう答えるのではあるまいか。

 もっとも、本年11月18日が札幌における初雪日となるのは過去100年で最も遅いのだそうだ。そう言われると確かにそう感じる。私にとってかつて衝撃だったのは雪が10月から降り始めたことであったので、それに比べたら今年は随分と時間が経っている。ちなみに翌年の4月まで雪は降り続けた。私にとってはこれまた空から槍が降ってきたような衝撃であった。

 さらに追加して北海道の道央地方の気候を書くことにする。
 本州と全く異にした4月が過ぎ、5月のゴールデンウィーク明けになってようやく桜が咲いた。何とその後に梅が咲いた。梅2月、桜4月という順番は北海道では違っていたのであった。そしてこのころに急に暖かくなってチューリップやらタンポポやらがラッシュで次から次へと咲いた。ちなみにゴールデンウィークの札幌の季節は、本州でいうと3月上・中旬ぐらいの時期に当たるように思う。したがって「新緑」というのこの時期にはない。本州ではツツジカキツバタ・アヤメなどの植物が咲いている頃だが。
 さて、6月を迎えると梅雨が本当にない。実にカラリとしているのである。後の時期も考慮すると札幌で最も動き回りやすい快適なシーズンというのは6月だと思う。
 7,8月は予想に反して暑かった。ただし、本州よりも湿度は明らかに低く、それを体感するといえばする。冷房がある施設は思ったよりも少なく、30℃を越えるような暑さは扇風機で無理やりやり過ごした。この頃、暑さのために線路の鋼鉄が設計時よりも熱膨張したために鉄道が運休するという事件があり、カルチャーショックのひとつだと感じた。また、おそらく涼しい北海道を想定してやって来たであろう道外からの観光客が暑そうに道を歩いていた光景を覚えている。
 だが8月後半からガンガンと最低気温が下がっていき、そして10月に至った。この時期の2,3日間、通称「雪虫」(「ゆきむし」と読みます)が大量発生した。これは道央地方では例年当たり前の現象と後で分かったのだが、当時の私は全くそのような存在を知らなかったために、外に出て行くのを大いにためらった。しかし発生から2,3日して突然姿を一斉に消すのである。
 冬。一晩で降雪50cmなんてのもザラ、札幌市都心部で吹雪でホワイトアウトにあうなんてのもザラ。さぞかし寒かろうと思いきや、真冬の時期、氷点下は当たり前であったが木造の建物に住んでいない限り、本州のそれよりも室内は暖かなところが多かった。室温と外の温度との差が35度程度あるなんて日常茶飯事であったが、それで体調が崩れることはなかった。しかも身体が進化したために氷点下には慣れていき、3月になって最高気温が0度を迎えると春が来たんだなと思わず笑みがこぼれてしまった。道路に堆積していった氷の道、雪の大塊が解け始める兆しを見せ、こうしてようやく長き冬が終わりを告げようとするのである。