アイドルを目指す

 自分の知り合いが声優の学校に行っていたことがあると最近、聞いたとき、へぇ、すごいもんだ、などと最初に思った。
 そのことを別の知り合いに話し、実際に芸能人を目指す人っているもんなんですねと言ったら、その知人が実は全日本美少女コンテストのある部門の受賞者と知り合いだと言い出した。裏付ける話も具体的であった。冒頭の自分の知り合いとは明らかに一線を画しているような感がしたため、さらに驚いた。
 インターネットでこのアイドルの卵を見てみたが、顔は平均以上ではあるが、とはいえ一般人の範囲内と言えなくもないような顔立ちであった。その上、その子の写真に写っているほかのこの写真も見ると、それもまた平均以上であるためか、際立っているとはあまり言えなかった。さらに、未だ美「少女」でしかなく、今後の顔立ちが美「女」として成長するのか不透明な印象もぬぐえなかった。
 この状況からどうやって売るのか、果たしてよく分からない。
 レッスンは毎朝8時から夜9時ごろまで毎日及ぶとのことである。中学生なのだが、学校はどうなるのか。そして、そのレッスン地獄に耐え続けられたとしても、その先売れるか保証は全くない。
 その知人はこの子に対し、売れなかった場合の引き際を考えておくべきだと度々言ったという。私も知人の立場にいたら本当に心配して同じことを言いそうな気がする。果たしてその子がどう反応したかは不明だといっていた。
 一方、こういう気がかりもあったが、このアイドルの卵の話が出てきたときに何か自分の胸がすかれるような思いもあった。なぜか。13,14歳ぐらいで自分の容貌を武器に日本で自分のファンを作ってやろう、あるいはそれに匹敵することをやってやろうと自分がその歳のときには思わなかった。その年で生意気な中学生は多いが、そういうのはたいてい、どうでもいい低次元なことで反抗的な子が多いだけのような気がする。自分もそうだったと思う。しかし、このアイドルの卵はそういうのと一線を画しているのではないか。たいしたものじゃないか!
 こうした二律背反状態の2つの思いが自分の心中にあるが、こう書いている今、やはり「やめておいたら」という思いの方が強い。ただし、これは私自身の性格、思いが影響している。
 アイドルになるにあたり、とにかくいかなる人に当たっても愛想良く、ときにはおべっかを使い、最悪自分の身体を売らないといけないから。ファンがどういう怪しい見知らぬ人であってもニコヤカにし、芸能関係者がいかに接するのが難しい人であってもホホエミを保っていないといけないなんて自分には無理と思うのだ。
 ただ、これが本当にできたら凄いもんだなとも思う。