余談

東京裁判とその後 - ある平和家の回想 (中公文庫)

東京裁判とその後 - ある平和家の回想 (中公文庫)

 重光葵『昭和の動乱』は、幣原喜重郎『外交五十年』を読んでいて途中から飽きてきたため、読み始めたに過ぎなかった。幣原の本はもう一度後に読んでみるつもりだ。が、おそらくは、重光の方に自分が重きを置く姿勢は今後とも変わらないだろう。
 もともと、幣原にせよ重光にせよ、戦前日本の姿を書いた本を読み始めたのは、先月に放送されていたNHKスペシャル「東京裁判」の影響だ。あのドラマが4夜連続で放送されていて途中から見始めたのだが、4日間、続きが気になって仕方がなかった。
 その「東京裁判」の中で、当時の裁判官の一人にオランダのレーリングという人がいた。明確にではないが、レーリングがこのドラマの主人公である。その彼が「二度と戦争を繰り返さない」と、他の様々な思想を持つ判事を前にして気炎を吐くシーンがあった。
 私はドラマ終了後もレーリングという人が気になり続けたため、何か彼の著書がないか探したところ、『東京裁判とその後――ある平和家の回想』という本に出合った。
 レーリングの本は、しかし、読みやすそうで読み難い。形式は、イタリアの大学の先生からのインタビューであり、文字を追うことは容易にできるのだ。しかし、何を言わんとしているのか。一読しただけでは分からない。もっとも、ちょっと驚くことが書いてあったりする。公判中、余暇で鈴木大拙に会ったとか。ドラマでは『ビルマの竪琴』で有名な竹山道雄と、これまた余暇に話していたが、そういうことはこの本には書かれてはいない。ともあれ、そういう当時の日本人との対話を公判中の余暇によく取り組んでいたことは事実のようだ。
 そのレーリングだが、これは裁判官からの平和実現の考え方という感じがした。外交実務家は、特に当時の外交官は平和実現をどう考えていたんだろう。それが、幣原や重光を読み始めたきっかけだった。